虫歯を削る基準とは?日本のガイドラインで切削の対象となるう蝕は?

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「虫歯を削る基準」の結論

削らなければいけない虫歯として、以下の5つが挙げられます。

  1. う窩がある
  2. 冷水痛などの自覚症状がある
  3. 審美障害の訴えがある
  4. 象牙質1/3を超える透過像がある
  5. う蝕リスクが高い

これらを一つの基準として、切削の有無は総合的に判断されます。

う蝕治療ガイドライン第2版

虫歯を削る基準│①う窩がある

う窩があるということは、歯に実質欠損があり、穴があいているということです。う窩の有無は、咬合面や頬・舌側などの視認性の高い場所の介入判断に有用です。

虫歯を削る基準│②自覚症状がある

虫歯に限らず、患者さんに何らかの自覚症状が出現した際は、治療の対象です。虫歯による冷水痛は当然ですが、不適合修復物による食片圧入なども再修復治療の対象となります。

虫歯を削る基準│③審美障害の訴えがある

う窩や自覚症状がない場合でも、患者さんから審美障害の訴えがある場合には治療対象となります。

前歯部唇側の白濁や褐色斑、充填されたCR辺縁の褐線などが代表的です。

虫歯を削る基準│④象牙質1/3を超える透過像がある

エックス線写真で象牙質1/3を超える透過像を認める場合には、治療の対象です。隣接面う蝕の介入判断に有用な基準です。

虫歯を削る基準│⑤う蝕リスクが高い

ガイドラインでは、以下がう蝕のハイリスク要因として挙げられている。

  1. 全身的既往歴
    • 糖衣錠の服用
    • 口腔乾燥症を引き起こす薬物の服用
    • 頭頚部腫瘍の放射線治療歴
    • シェーグレン症候群
    • 身体障害
  2. 歯科的既往
    • 多数の修復歯の存在
    • 頻回な再修復
    • 一度に多数歯におよぶ修復処置
  3. 口腔衛生状態
    • 少ない口腔清掃回数
    • 矯正装置や義歯の装着
  4. 食事
    • 頻回な甘い飲食物の摂取
  5. フッ化物
    • フッ化物の不使用
  6. 唾液
    • 唾液分泌量の低下
  7. 社会生活
    • 貧困
    • 低い教育レベル
    • 非雇用者
    • 水道水のフッ化物濃度の無調整

まとめ

切削治療の適否は、う窩や自覚症状・審美障害の有無や、象牙質1/3を超える透過像があるか、う蝕リスクが高いかなどを基準に総合的に判断されます。

Q&A

「虫歯を削る基準」に関連する質問を集めました。

虫歯がC1の場合は削るべきですか?

隣接面のC1は一般的には削る必要はありません。咬合面や頬舌側では、う窩や審美障害を認めた場合にはC1でも切削治療の対象となります。また、う蝕ハイリスクの場合は、隣接面のC1に対しても切削介入を行うことがあります。

虫歯をわざと残す方法はあるか?

虫歯をわざと残す場面は3パターン考えられます。一つ目は、虫歯が小さく、切削介入する必要がない場合です。二つ目は、露髄の可能性があるため、暫間的間接覆髄を行う場合です。三つ目は、露髄の可能性があるため、シールドレストレーションを行う場合です。暫間的間接覆髄では、最終的には虫歯を取り切りますが、治療中は虫歯をわざと残します。

執筆者

東京都池袋のグランドメゾンデンタルクリニックに勤務する歯科医師

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